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「いや、1年で集中して結果を出すべきだ」結局、さらなる分析と調整の結果、20か月のプランに落ち着くことになった。 ビジネスケースの作成は着々と進んだが、やはり支社マーケティングラインに関するコンセンサスはなかなか得られなかった。
特に、業務プロセスのリエンジおよびコールセンターの構築によって自由になるSリシターの時間をどう有効利用するかが、議論の最大のポインJエミニ側のスタッフは、O田ほかの3名に縮小され、プロジェクトチームは支社マーケティングラインのあるべき姿の設計、特にSリシターの役割をどう変えるべきかを徹底的に議論していった。 DILOなどの調査活動は、ある意味でSリシターの現在の仕事の半分を否定するような分析結果をもたらしていた。
また、「営業成績のほとんどはSリシターの企画力や提案力ではなく、どの代理店を担当するかにもつとも大きく影響されている」という分析データも、Sリシターのプライドを傷つけた。 代理店に日常的に接しているSリシターにとっては、やはり代理店との円滑なコミュニケーションが最大の関心事になる。
いくらSリシターの負担を減らして企画提案型営業に専念させるための改革だといっても、従来のコミュニケーションを断ち切るような方針をやすやすと受け入れるわけにはいかない。 「代理店との人間関係を切り捨てるようなこと、できるわけないか」「高齢者の多い代理店に携帯パソコンが使えるわけがないよ」「一見無駄に見える事務作業の積み重ねが、次の営業機会につながるのだ」現場からはもちろん、役員の間からも反対の声が絶えることはなかった。
そこでT園やM本らの首脳陣は、プロジェクトチームに対し、もう一度フェーズ0の分析結果を検証し、分析の意味合いについてコンセンサスを得るためのワークショップを開催するよう指示した。 このワークショップには、A津本部長をはじめ部課長、支店長など10数名の支社マーケティング本部関係者が出席した。
プロジェクトチームは、生損保相互参入後のイメージをより具体的につかんでもらうために、「あなたが損保系生保子会社の社長になった場合、どのようにAリコを攻撃するか」をテーマにしたシミュレーションゲームを取り入れた。 内側に向かいがちな社員の視点を外に向けさせ、Aリコが置かれている現状やこれから起こりうる現実を客観的に把握してもらうための手法である。

Aリコ社員という束縛を離れ競合各社の立場に立って見れば、自分たちの強みと弱みが改めて浮かび上がってくる。 意外な点に気づくことも多い。
そうした発見の上に立って、今度はあるべき姿をイメージしてもらうのである。 具体的には、九州地区に仮想支社を想定し、それぞれの営業店にSリシターやKラークを何人配置し、どのような活動に力を注いでいけばいいのか、新しい支社モデルを作成してもらった。
その支社モデルとプロジェクトチームが考える支社モデルの折衷案を作成し、首脳陣に提示した。 その案は文字どおりの折衷案で、首脳陣を納得させるには至らなかった。
プロジェクトを前に進めるためには、このあたりでショック療法が必要だった。 何よりもまず、役員レベルに過去の成功体験から脱け出してもらい、変革に向けた意思を固めてもらわねばならない。
そこで、第三者であるJエミニが独自の支社モデルを作成し、役員向けのワークショップを開催することになった。 Jエミニが提唱するビジネス.トランスフォーメーションの概念では、主役はあくまでもクライアント企業の社員たちでなければならない。
だからこそ、一見遠まわりのように見えても、これまで社員たち中心に構成されるプロジェクトチームが、改革の対象となる部署と根気よく折衝を続けてきたのである。 だが、社内にはやはり身内意識があり、議論が煮詰まるケースが多い。
そういう場合には、第三者であるJエミニが冷静な客観的データを突きつけ、議論を先に進める役割を果たす必要がある。 いわば、嫌われ者の役まわりを担うのである。
このワークショップの道具としてO田らが準備したのは、「Aリコの社員が信じている神話と規制緩和後の現実」というショッキングな資料だった。 「Aリコが今後も成長を続けていくためには、支社マーケティング本部の業績向上が不可欠だ。
そのためには、優秀な代理店を育て、終身保険などの高額商品を売ってもらう必要がある。 現実には大多数の代理店が手続きの簡単なガン保険や医療保険など第三分野の単品販売だけに力を入れており、現在のAリコの収益もかなりの部分でそれに依存している。
これまでの延長線上のやり方で、たとえ当面の規制緩和は乗り切れたとしても、将来プロジェクト全体に関するビジネスケースには、Aリコジャパンだけでなく、米国本社および世界中に展開するAリコグローバルに与える経済効果を示す必要があった。 そこで、Aリコジャパンの担当責任者の協力を得て、Jエミニが財務に関するシミュレーションを作成することになった。

Jエミニは、生損保相互参入という外部環境の変化がAリコにどんな収益変化をもたらすかを示す際に、「最悪」「普通」「最善」の3つのシナリオを想定した。 「最悪」は、規制緩和と同時に収益が一気に落ち込み、まったくもち直さない状態。
「普通」は、落ち込んだあとにもち直して徐々に回復基調に乗る状態。 「最善」は、収益が落ち込まず従来の伸び率で成第三分野が国内大手生保にも解禁されたら、経営の根幹に関わる深刻な打撃を受けかねないこうした長期的な予測をベースにしたJエミニ案は、支社マーケティング本部もさすがに納得するものであった。
おおむねの合意が得られ、O田は首脳陣の了承を受けたJエミニ案をプロジェクトメンバーに示し、共有化した。 ベースに最終ビジネスケースをまとめ始めた。
外部環境はこちらではコントロールできないのだから、それぞれの状態になった場合に、どんな支社モデルを描けばいいか、具体的には全国の支社や営業所にSリシターやKラークをどう再配置すればいいのかを具体的に示していったのである。 一方で、コールセンターやワークフローシステムを構築する際にどんなシステムを導入すればいいのか、システムに特化したビジネスケースの作成も進めていった。
AリコグローバルおよびAIGは権限を分散する特殊なマトリックス組織を採用しているため、ビジネスケースの承認には多少の時間を要した。 だが、予定していた6月いっぱいにはすべての承認活動をクリアし、プロジェクトチームが苦労の末にまとめ上げたビジネスケースは、ついに実行段階「フェーズ」に移行することになったのである。
1996年7月、「プロジェクトオゾン」の実行段階フェーズを推進する合同チームがAリコ側のフェーズ0のメンバーはそのまま残留し、新たに一3名の社員が実行部隊として加わった。 Jミニ側も、リーダーのO田以下3名がチームに合流した。

また、パリを拠点とするキャップ.Jエミニからも情報通信技術関連やコールセンター関連の専門家が来日し、チームは大幅に膨らんだ。 これまで使っていたAIGビル14階のプロジェクトルームには人が入りきれなくなり、スペースにゆとりのある地下1階に引っ越すことになった。
そのスペースは、元Cースマンハッタン銀行東京支店の業務部隊が使っていたところで、巨大な金庫が残っていた。

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